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ベニシアが語る「自然からの贈りもの」ロング・インタビュー@
ベニシアが語る「自然からの贈りもの」ロング・インタビューA
『カントリー・ダイアリー』を見て私も描いてみたいと思った
【ハーブの本をつくるまで】
―――イギリスではいつも料理にハーブを使っていましたか?
11歳のときに家族で3ヶ月船に乗って旅行することになりました。私はご飯をつくる役になったので、そのときに料理の基本を覚えました。当時住んでいたジャージー島は、イギリス領ですがフランスにとても近かったので、フランスでなじみのあるハーブの使い方も教わったのです。
―――ハーブの本をつくるきっかけとなったのは、どんなことですか?
ハーブはそれぞれ役割や効能を持っていて、育てはじめたら興味がどんどん広がっていきました。料理だけでなく、生活に使うもの、病気予防も。ガーデニングダイアリーというのがイギリスでは売られています。ガーデニング専用の日記です。
大原へ越してきて、庭をつくるときのイメージや、それぞれの時期にやらなくてはいけないこと、収穫できるものなどをそれに書いていきました。日記を書く人をダイアリストというのですが、それに近いと思います。それを写真や料理のレシピとともに本にしたのがこの本(ベニシアの庭づくり ハーブと暮らす12か月
【花の声を聞くこと】
―――花の絵もずっと描いていたのでしょうか?
以前、線画で何かを描きとめたりしていましたが色を塗った絵は描けないと思っていました。でもちょうどこの家に来た頃に『カントリー・ダイアリー
―――花のことを見つめて、愛しい気持ちで描いているのが伝わってきます。花の世話をするときも、きっと心をこめてされているんだろうと思います。映像で、苗を土に移すときに、grow grow (伸びろ、伸びろ)とおまじないのようにおっしゃっていました。
アメリカ先住民のおばあちゃんのハーバリストは薬草に使うハーブを切るときに「切ってもいいですか?」とハーブに聞いてから穫るんだそうです。人間と同じように花にも魂があると彼女は信じているんです。
そして切ったら、干す前に1日寝かしてあげる。それは“切る”ことで花にショックを与えたと考えているから。それを知ってとても美しいと思ったんですね。日々、忙しくしていて、自分はそんなことやっていなかったなと気づいて、“切る前はちゃんと聞いてから切ろう”と。
できるだけひとつひとつの花を見て、心で話すようにしています。私の書いた本を読んで、時間をゆっくり使い、スローダウンして生活をしてみようと思ってくれる人が少しでも増えたら嬉しいです。
【言葉からの贈りもの】
You’ve got to do something to help the world go around.
イギリスを離れて日本へ
―――イギリスを離れ、どうして日本へ来ることになったのか教えて下さい。
18歳で社交界にデビューをしましたが、そこでは私の心を満たすことができませんでした。どうやって生きていけばいいのかという答えを探して、インドにいる若い師を訪ねるためにイギリスを出たのです。19歳のときでした。仲間たちと車に乗って2ヵ月かけてインドにたどり着きました。
―――インドではどんな生活をしていたのですか?
アシュラムと呼ばれる道場に滞在し、庭や料理の手伝い、ヨガや瞑想などをして過ごしました。その8ヶ月の間に私は人生をどういう風に見たらいいのかを教わりました。自分の探しているものは自分の心の中にあるから、心に聞きなさい、と若き師は言ったのです。
―――その後日本へいらしたのですね?
もっと東へ行きたいと思ったからです。そして船で鹿児島に着きました。日本に定住したいと母に言ったときには勘当されてしまいましたが、京都で英会話学校をはじめたのは日本に来てから7年目です。日本へ来てからも大変なことはいろいろとありましたが、その度に私はいつも自分の心に“正しい歩き方”を聞こうとしました。自分にとっての正しい道がわかったとき、わたしはそれを無視するということができないようです。
勝手に日本に定住することを決めて、母とは大げんかを何度もしました。これから先もどうなるかは誰にもわかりませんが、精いっぱい生きることが私の目標です。精一杯美しく生きることが。
【自分の中のメッセージ】
―――ベニシアさんが番組で語られる言葉や、本の中には、心が弱くなった時に励ましてくれるものがいくつもありますね。
昔の人が言った言葉やことわざで心に残るものを書き留めているノートがあります。外国のものも日本のものも。自分がふと思ったことも書き留めます。今日の朝、“昔と先のことはわからない。わかっているのは、今を一生懸命、間違うことのないように生きること”と書きました。
テレビではそうした言葉から抜き出して読んでいました。でも、私がすべてを悟っているからそう書いているわけではないんです。辛いことがあって、まだ胸が痛くても、それに負けたくないと思うから、自分のために書いているんです。
【大叔母さんから言われた言葉】
―――ベニシアさんの言葉に励まされた人はたくさんいると思います。
自分の中に、何か人に伝えるメッセージを持っているんだと思うんですね。英会話学校をはじめてから、生徒さんに英語だけでなく伝えたいことをいろいろお話してきました。テレビに出ることになったときに、番組の最後になぜか言葉を読むことになりました。
役に立てているとしたら、それは恵まれていることです。昔、大叔母のアンに言われたことがあるんです。“自分の人生を無駄にせず、地球を守るようなことをしなさい…”You’ve got to do something to help the world go around.”と。
―――どうして大叔母さんはそんなことを言ったのでしょう?
わかりません。彼女は私の父を育てた人で、とても思慮深い人でした。俳優になろうと夢見ていた父が、母のような貴族の家の人間と結婚して贅沢な暮らしを覚え、結局仕事もうまくいかなかったのを見ていたからじゃないかと思います。
“あなたはお父さんやお母さんのようになったらだめ”と何度も言われました。でも、どんな人にも役割があるんだと思います。花やハーブに役割があるように、自分の役割に気づくことができれば、それを生かすことを考えられる。そして、それは頭で考えるんじゃなくて、心で感じることが大切なんじゃないかなと思います。
―――誰かの役に立つこととか?
私もたくさんの人に助けられてきました。本当に困った人にはちゃんと出会いがあると思うんですね。私はそれを“恵み”と言っているんですけれど、そういうことが宇宙の中できっといっぱい起きていると。
【心に庭をつくる】
―――“心に庭を育てる”ということも書かれていました。
インドへ行く前、私が求めていた幸せを庭にたとえて話してくれた人がいました。“その庭は外の世界にあるのではなく、”あなた自身の内側にある“と。心の声を聞くということを、心の中に庭をつくるという言い方で私に教えてくれました。
―――庭に咲く花を見るように、色や香りを確かめるように、心を見つめてあげなさいということでしょうか。
そういうことだと思います。たとえば自分の心の中にしゃべる声があって、きっとふたつあると思うんです。ひとつはネガティブなほう、“どうしよう、だめかもしれない”。もうひとつはポジティブなほう、“今日はゆっくりして、この花、見てごらん”。どっちを選ぶかは自分自身ですが、なるべくポジティブなことを言っている声を聞いてあげると、きっといい方向へ行く気が私はしているんです。
以上、
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月刊MOE2014年7月号より
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