2017年06月26日

首都直下 地震減災に挑む(上)首都圏の地下で何が







「安政江戸」が教訓 観測網、官民で緻密に

首都直下地震に備え、官民の取り組みが本格化してきた。政府はマグニチュード(M)7級の地震が30年以内に発生する確率を70%と予測するが、複雑な地下構造を持つ首都圏の地震活動は今も分からないことが多い。地震像の解明や被害の軽減に向け、急ピッチで対策や研究が進む。


「首都圏は今後20〜30年間に極めて高い直下地震のリスクを抱えている」
防災科学技術研究所の林春男理事長は23日、都内に集まった政府や大学、企業の関係者に訴えた。

 
首都直下地震は最大で約2万3千人の死者や95兆円の経済被害を出すといわれる大地震だ。発生すれば影響は首都圏にとどまらない。被害を少しでも抑えようとこの日、防災科研などが中心となり産官学の新たな連携組織「データ利活用協議会」が発足した。

 

新組織の目標は、従来を大幅に上回る緻密な地震観測網を築くことだ。首都圏では地盤の特性などから場所が少し離れると揺れ方が変わる。政府などは首都圏約500カ所に観測点を設けていたが、揺れや被害をきめ細かく把握するには不十分だった。企業など民の力を活用して観測体制を充実させる方針だ。

 

協議会には約4000カ所に地震計を置く東京ガスのほか、NTTドコモやJR東日本などが参加する。集めた地震のデータを人工知能(AI)などで分析。数十メートルの単位で揺れをとらえ、被害の大きそうな場所を素早く絞り込むことを目指す。

 
「目標は建物一棟一棟の揺れ方をつかむことだ」と協議会の責任者で、政府の地震調査委員会の委員長でもある平田直東京大学教授は力を込める。被害の大きいビルや地域での救助活動を優先するといった対応がとれるようにする狙いだ。約5年かけてデータ活用の仕組みを整える考えだ。

 
首都圏は、地震が多い日本でも特に地震活動が活発だ。陸のプレート(岩板)の下にフィリピン海プレートや太平洋プレートが潜り、様々なタイプの地震が発生する。このうち、M7級の地震は沈み込むフィリピン海プレートの内部で起きることが多かったとこれまでの研究で分かっている。

 
過去の地震を知ることは被害の推定や対策を講じるうえで欠かせない。
研究者が注目するのは1855年の安政江戸地震だ。


この地震はM7級の「首都直下地震」で、死者は1万人に達したともいわれる。「最も教訓とすべき地震」(平田教授)でありながら、発生の仕組みは正確に分かっていなかった。震源は地表付近とする説から深さ100キロメートル程度とする説まで見方が分かれていた。

 
平田教授らは地下深部の3次元構造などを解明。地震の記録を残す古文書なども洗い直し、安政江戸地震が「フィリピン海プレートの内部か上面で発生したと考えられる」と結論づけた。

 
清水建設の佐藤智美上席研究員は、安政江戸地震の震度分布が「2005年に発生した千葉県北西部地震と類似している」と分析。震源は千葉県北西部の下のフィリピン海プレート内部、深さ約60キロメートルだったと推定した。得られた知見から揺れの特性も割り出した。

 
千葉県北西部地震は最大震度5強だったが、首都圏で6万4000台のエレベーターが緊急停止し、閉じ込めが多数発生した。同社は今後、超高層建物などの耐震設計に反映していく考えだ。

 
沈み込むプレートが起こすM7級の地震の平均発生間隔は約27年。直近の1987年の千葉県東方沖地震(M6.7)から30年を迎える。安政江戸地震のような大被害をもたらすとは限らないが、発生の仕組みなどの研究を重ね、対策に生かす必要がある。地震の実像に迫り「減災」につなげることができるか。国を挙げた挑戦が続く。
日本経済新聞2017年6月26日朝刊より
首都直下地震 減災に挑む(中) IoT駆使 被害つかめへ続く









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posted by キキ at 00:00 | 地震と火山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする