震度7が2度起きた熊本地震では、これまで政府が予測していなかった事態も起きています。これらの事態は原発再稼働を審査する原子力規制のあり方にも影響を与えます。熊本地震の新たな事態は、原発の安全性を根本から問い直すものです。
政府が予測しなかったのは、地表に過去の活動の痕跡を残していない隠れた断層が動いたことです。熊本地震では、熊本県南阿蘇村や益城町などを貫く布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯が、水平に最大で2メートル動きました。
この断層帯は、活動した痕跡が地形に残っており、政府も以前から危険視していました。名古屋大学・鈴木康弘教授は、政府の地震調査研究推進部でこの断層帯の評価を担当しました。
熊本地震の調査に入った鈴木教授らは、この断層帯から枝分かれした新たな分岐断層が表面に出ていることを発見。最大2メートル動いていたことを確認しました。この分岐断層の長さは約4キロ。建物が多く倒壊した益城町の中心部に向けて延びています。(下図)
鈴木教授は、「この分岐断層は地表に痕跡を残しておらず、これまでの調査で見落とされていました。それが布田川・日奈久断層帯と同じ最大で2メートルも水平にずれました。驚きです」と語っています。
これまでも地表に痕跡を残していない隠れた断層が動くことはありました。しかし2メートルも水平にずれたことが確認されたのは初めてです。
【被害予測難しい】
熊本地震での新たな事態は、原発の安全性にも大きく関わる重大問題です。熊本地震のように通常の調査では見つからない断層を、原発の敷地内や近くで見落としていないかどうか原子力規制委員会は再調査する必要があります。
さらに、事業者が「動かない」「気を付ける必要がない」としている断層が、本当に動かないのかどうかも問われます。実際、北陸電力志賀原発(石川県)では、2007年に長さ約20キロの海底活断層が動き、想定以上の強い揺れに襲われました。
【原発再稼働 新基準の危険性】
事業者は此の海底活断層を原発建設時に把握していましたが、6〜7キロの短い断層で3分割となっているので、全体が動くことはないと判断していました。明らかな過小評価です。
政府は原発施設内の活断層を一貫して軽視してきました。東日本大震災後の2013年に規制委が策定した新規制基準でもその姿勢は変わりません。新規制基準は、原子炉建屋など重要施設以外は活断層の真上にあっても、設置は可能としています。
熊本地震では活断層が複雑にずれており、活断層近くの揺れの予測が難しいことも分かりました。原発敷地内の活断層が動いた場合、どんな被害が出るのか予測できません。特別なケースをのぞき、敷地内に活断層があっても原発設置を認める新規制基準の根本的な見直しが必要です。
2016年5月22日号しんぶん赤旗日曜版より
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